フリーランスとして働く看護師の実態を現役看護師が紹介します。コロナ禍の今、看護師としての働き方を考え始めた方も多いはず。そこで看護師がフリーランスとして働くことについて今日は徹底解説します
1980年代生まれ、神奈川県出身。県内高校卒業後、看護学校へ進学し、正看護師となる。総合病院に勤める傍ら、病院以外で勤務する看護の世界に興味を持ち、施設看護師としても勤務。その後結婚、出産。育休中に、ライターとして活躍する看護師に出会う。看護師として臨床以外に磨けるスキルに可能性を感じ、自らもライターとしての活動を開始する。これまでの経験を活かし、医療福祉系の記事を中心に執筆中。
”フリーランス”とは特定の組織に所属せず、自身の持っている技術や資格を活かし、
独立して個人で仕事を請け負うことを指します。あなたもフリーライターやフリーランス
エンジニアと言った言葉を聞いたことがあるはず。特別な名称としてフリーランス看護
師と呼ばれる職種はありません。しかし看護師も一緒でフリーランスとして働くことが
できるため、ここではフリーランス看護師と呼んでいます。特別な知識、技術やアイディアがない人が、独立して個人事業主として働くのは困難なこと。それは他者に提供できる商品やサービスがないからです。しかし看護師は雇用され働いている場合も、専門的な知識と技術を持ち仕事をしていますね。それが看護師の場合、商品になると言えます。看護の知識と技術を持つ私たちは、そのような理由からフリーランスがあっている側面を持ち合わせています。
実際は下記のような現場で働く看護師が多いようです。
まず働くうえで、派遣会社に登録する方が多数を占めます。派遣会社は仕事を単発
~長期で紹介している会社のことを言います。派遣会社に登録しておくことで、仕事を
希望する日、または期間を事前に伝え仕事を紹介してもらうことができます。自身で
営業することがないので、初心者でも働きやすいと言えるでしょう。これはフリーランスに近い働き方として紹介しておきます。また派遣会社ではなく、雇用の会社が直接
登録制度を用意している場合もあります。具体的には施設の本社に登録しておいて、
勤務ごとにそれぞれの勤務先に出向する形です。個人契約の場合は、契約主専属で
の常駐看護師として働くことや、アルバイトで複数の職場を掛け持ちすること、期間限
定で働くことが挙げられます。
フリーランスはメリットが多くある反面、デメリットもあるのが事実です。フリーランス看護師になるのであれば、これらの側面を事前に理解しておくのは必須です。
メリットとしては下記のようなことが挙げられます
1. プライベートと仕事が自分のぺースで両立できる
2. 働いたら働いた分だけ給与として見返りが来る
3. 人間関係に悩むことが少ない
4. 様々な職場を体験できる働き方もあり、やりがいがある
いずれにおいても自由度が高いところが何よりのメリットと言えます。仕事ばかりで
疲れ、仕事をやめたいと考える方にはこの環境は最適です。生活するために仕事を
しなくてはなりませんが、自分の心身を犠牲にして体調を崩しては元も子もありませ
ん。一か所の病院や施設では仕事がどうしてもルーティンワークになりがち。看護師
は変化を求めるアクティブな人も多いので、その時々で、様々な職場を選択できるの
はよいことです。
一方でデメリットも考えなくてはなりません。自分で仕事を請け負うと言うことは、雇
用されていればやってくれることを自身でやらなくてはならないのです。
1. 健康保険、年金、税金関係の手続きを自分で行う必要がある
2. 安定した収入は手に入らない
3. 看護師としての実績や経歴が積みにくいが、スキルを求められる
まずはサラリーマンである場合、各種保険や税金等の手続きは経理担当の部署が
ほぼ対応してくれます。そのため、時期が来たら書類を多少記載し出すだけでよいの
ですが、これらのことを自分でやらなくてはなりません。
二点目にフリーランスですから、仕事を継続しない点より収入も継続しないこともあ
ると考えましょう。働かないと、その分の収入は入ってこないのはつらい点です。いつでも仕事があるわけでもないことも考えられますね。
最後に技術や知識を持っていないと、即戦力になれずフリーランスとして勤務するこ
とは困難です。応援ナースなどは、それらを持つ人材が不足しており募集しているの
が大半の理由。そのため、「一から教えてもらえるでしょ。」というスタンスでは厳しい
のが現状です。経験をつんでからでないとフリーランスとして働くことはできません。
フリーランスと名乗るだけではフリーランス看護師になることはできません。実際に動
く場合には下記のような手続きは必要になってきますので確認しておきましょう。
1. 国民健康保険の切り替えを行う
2. 国民年金の手続き
3. 青色申告承認申請書
4. 名刺や印鑑を用意する
5. 仕事用の口座を作る
6. 開業届を出す
雇用されている場合、雇用先で各健康保険に加入します。しかしフリーランスの
場合は自身で手続きをしなくてはなりません。
と言った手段があります。いずれも条件があるため、検討している保険組合に確認が
必須となってきます。フリーランスは特に体が資本。それでも万が一は起こってしまう
ことも。忘れずに手続きをします。
老後に受け取れる年金。これまで雇用されていた方は、給与から天引きされてい
たものです。これもフリーランスになった場合には自身で払い込みが必要です。居
住している地域の市区町村役場へ年金手帳を持参し、手続きをします。
経理の仕事に関わってくるのがこちら、青色申告承認申請書。フリーランスとして
働く場合、自身で収支報告をしなくてはなりません。その記録をもって確定申告と
なります。収入を得ている場合、納税の義務が発生します。「知らなかった」では済
まされませんから、脱税にならないよう、この後に出てくる開業届と一緒に忘れず
に手続きをします。これは税務署に出します。
フリーランスで大切なのは、お客様は当然、お客様である相手以外にも自身を知
ってもらうこと。オンラインでのやり取りも増えたここ数年ですが、いざ実際に会うこ
とになった場合、名刺がなくては営業の際に不便です。
仕事用とプライベート用の口座は分けることをお勧めします。4-3 で説明したよ
うに、収支報告をまとめ確定申告の際、仕事用の口座があれば確認が把握しやす
くなります。印鑑もビジネス用のものを用意しましょう。今後訪問看護ステーションを開くなど開業を考えている場合は、事業用の印鑑作成もおすすめ。
誰にも雇われず個人や法人と契約し、給与をもらっている場合は、開業届を出しま
しょう。開業届をだすことで、先に説明した青色申告を行うことができます。これで経
費を抑えることや、節税をすることに繋がります。事業所得が生じてから1 か月以内
に届を出さなくてはならないことも押さえておきましょう。こちらも税務署に出すことに
なります。
どの職場でも発生する人間関係は、フリーランスであろうと一緒です。しかし、同じ
場所で継続して働くことはほとんどないため、割り切って働くことができます。また、老
人ホームなどの施設看護師は人数が少ないこともあるのでその場合は病院のほうが
良いのかもしれません。在籍しているスタッフの数を確認するのも良いです。
短期派遣で、託児所のある施設を選ぶ選択肢を選べば可能です。実際筆者が
働いていた病院にも応援ナースとして未就学児の子がいるママ看護師のフリーランス
の方がいました。その方の場合、子供が大きくなるまで自分で仕事の都合について事
細かにシフトを組みたいとのことであったため、パートより自由が利く点は便利かもしれません。
開業届を無料でサポートしてくれるweb サービスがあります。また、税務署やお住い
の市区町村の役所でわからない点は教えてくれますから問い合わせを。全てお任せ
したいのであれば、費用はかかりますが税理士といった専門家に相談するのも手段
としてありますので、難しいことではありません。
今回はフリーランス看護師についての実際をまとめました。メリットデメリット、それぞ
れありますが、看護師の知識と経験があれば、フリーランスとして働くことは決して難
しいことではありません。生き方だけでなく、働き方にも多様性があります。看護師と
言う素晴らしい資格は一生もの。今の働く環境を変えてみたいと考えるあなたに、実
は向いている環境なのかもしれません。