看護師さんは患者さんを介護するご家族の姿を見る機会も多いでしょう。30代、40代になってくると親も高齢化します。看護師としてバリバリと働いている中、もし、自分の両親に介護が必要になったら、仕事との両立は可能なのでしょうか。ふと考えると不安になる日もあるかもしれません。
今回は介護にかかる「お金」の部分に焦点を当ててみましょう。
介護費用の心配はつきません。NPO法人日本FP協会の「世代別比較 くらしとお金に関する調査2018」によると、40代の41.5%が親などの介護に不安を感じており、全世代の中で最も多い結果でした。人間は、よくわからないものには恐れを抱きます。介護にかかるお金の目安を知り、来るべき未来に備えましょう。
介護にかかるお金には、老人ホームなどに入居する際の一時金・月額費用、自宅のリフォーム代、車椅子やポータブルトイレなどのレンタル・購入代、リハビリテーション、訪問介護・看護(入浴や食事など)、介護食などがあります。
これらのほとんどは介護保険が適用され、1~3割の自己負担で済みます。自己負担分の平均は、月額7.8万円、リフォーム代などの一時金は69万円で、介護にかかる平均期間は、54.5ヵ月でした。(データはいずれも公益財団法人生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」2018年度版より)。
よって、介護にかかる総費用の平均は、7.8万円×54.5ヵ月+69万円=494.1万円ということになります。
上記の数値はあくまでも平均です。介護の必要性や地域、利用する介護サービスによって、かかる費用には差が出ます。
もし具体的な要介護度や受けようとしているサービスがわかれば、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」で試算できます。このサイトによると、最も重い要介護度5の人が個室型の施設に入った場合の目安は、月額14万円ほどです。
介護施設は、施設によって費用が大きく異なります。入居一時金だけで数千万円かかるところも珍しくありません。介護費用は、上を見ればキリがないのです。
もし親の介護費用を払うことになれば、かなりの負担になるでしょう。毎月8万円前後、多い場合は14万円ほどの援助を数年間続けられるでしょうか?
お世話になった両親へ恩返ししたいという気持ちは大切にしていただきたいですが、親の介護費用を負担したばかりに、自分の老後資金がなくなってしまうということになりかねません。このような状況は、両親も望んでいないのではないでしょうか。
国立社会保障・人口問題研究所の「生活と支え合いに関する調査(2012年)」によると、親を経済的に援助する女性の割合は8.3%と決して高くありません。
2007年の同調査では、援助しない理由として最も多いのは、「親が援助を必要としていないから」の60.3%でした(未婚女性の回答)。自分の経済的理由で援助しないのは15.7%で、援助している人よりもずっと多いです。
状況にもよりますが、親に経済的援助をしないことは恥ずかしいことではありません。親は、できる範囲で自分の介護費用を捻出するべきです。個室の場合約14万円かかると書きましたが、大部屋であれば10万円ほどで済みます。夫婦の平均的な年金額は月額22万円ですから、夫婦揃って入居したとしても自身の収入でまかなえます。
このように考えると、自分の介護は家族や親戚に頼れません。親の介護費用の問題は、同時に自分の介護費用の問題でもあるのです。
介護費用が実際にいくらかかるかは、介護が終わるまでわかりません。前述のとおり、必要とされるサービスや介護期間は人によって異なるからです。
介護が長引いて数千万円かかるかもしれませんし、必要ないまま安らかに旅立つ可能性もあります。平均で500万円という目安はありますが、500万円貯めたからといって安心できるわけではないのです。
介護に限らず、老後の生活資金や健康問題など、不安は尽きません。将来困らないように備えるなら、早いほうがいいでしょう。親を援助するかどうかに関わらず、お金を増やす仕組みづくりは若いうちに始めることをおすすめします。