看護師や介護職、カウンセラーなど他者を支援する職種の人は、知らぬ間に「共感疲労」を溜めがちです。共感疲労は、特にやさしくて熱心な人に起こりやすいと言われています。今回は看護師に向けて、共感疲労の意味と対処法を紹介します。
共感疲労とは、苦しんでいる人・悩んでいる人と接するうちに、苦しみや悩みに共感するあまり、自分に疲労が蓄積していくことをいいます。共感疲労は、人を支援したりケアしたりする立場の人なら、誰にでも起こり得るものです。
人間には、他人の痛みや苦しみを想像し、共感する能力が備わっています。だからこそ私たちは人にやさしくでき、お互いに助け合うことができます。ただし共感のしすぎは、自分自身も同じストレスを抱えることにつながります。
看護師なら、死の恐怖におびえている人や、身近な人の死に打ちひしがれている人と関わることも多いでしょう。そうするうちに、いつの間にか共感疲労が溜まっていることがあります。
以下のような自覚症状がある人は、特に注意しましょう。
・疲れが取れない状態がずっと続いている。起床後やオフの日も身体がだるい。
・好きなことをしても楽しくない。好きな仕事でも達成感がない。
・相手の話を聞いても心が動かなかったり、自分の感情がわからなかったりすることがある。
・以前は気にならなかったようなことでイライラするようになった。
悪化すると不眠やうつ状態になることもあるので、当てはまった人は意識的に休息を取るようにしてください。
緊張状態が続いていると、布団に入ってもすぐに寝付けなかったり、眠りが浅く何度も目が覚めてしまったりします。そんな状態では、十分な疲労回復ができません。睡眠の質が低下すると、イライラや不安感が強くなるなど、さまざまな悪影響が出てきます。
寝る前のストレッチを習慣づける、アロマを焚く、快眠音楽を聴くなど、質の高い睡眠ができるよう工夫をしてみてください。よく眠れると、それだけで頭がスッキリして身体が軽くなることが多いものです。
オフの日も、つい患者さんや仕事のことを考えてしまう人もいるでしょう。しかし、それでは仕事がずっと続いているような状態になり、脳や体がリラックスできません。
映画やドラマに熱中したり、凝った料理を作ってみたり、自分の好きなことに没頭してみましょう。好きなことをすると、自分自身の感情を取り戻せるはずです。仕事のことを完全に忘れる時間を持つことが、共感疲労から早く回復することにつながります。
誰かと過ごす時間は楽しいけれど、1人の時間と比べれば刺激が多いと言えます。自宅で1人で過ごすならメイクも必要ないし、誰にも気を遣う必要がありません。思いっきり自分の好きなように、だらけてみてください。
だらだら過ごすことに罪悪感を抱く人もいるかもしれません。しかしそれで疲労回復できれば、その分仕事に打ち込めます。「休むのも仕事のうち」という言葉があるように、疲労回復の時間と割り切って、思う存分自分を甘やかしてみましょう。
休んでいるつもりが、実は脳が休めていないというケースは少なくありません。例えば、帰宅後や休日にスマホゲームをすると、一時的に楽しくなるかもしれません。しかし、その間も脳は働き続けているため、実は脳の疲労回復にはなっていないのです。
散歩やジョギングをしている間は、他のことができません。そのため、強制的に脳を休ませることができます。青空や木立の緑を眺めたり、道行く人を眺めたりして、ぼんやりとした時間を過ごしましょう。脳が回復することを体感できるはずです。
イライラやストレスが強い場合は、信頼できる相手に話を聞いてもらうのも効果的です。言語化することで自分の悩みを客観的に捉えられるし、味方になってくれる相手に話を聞いてもらえば心が落ち着くでしょう。
ただし、人選や時間帯には十分気をつけてください。ストレス発散のつもりが、かえってストレスを溜め込んでしまうことがないように信頼できる相手を選び、相手の都合や時間帯にも配慮しましょう。
心やさしく仕事熱心な看護師ほど、共感疲労でストレスを溜めてしまう傾向があります。患者さんに共感し親身に寄り添いながらも、帰宅後や休日は思いっきり自分の時間を持ち、共感疲労を溜めないようにすることが大切です。
思いやりを他者ではなく自分自身に向けることを、セルフ・コンパッションといいます。看護師など人をケアする職種だと、つい周囲にばかり思いやりを向け、自分を二の次にしてしまいがちです。
しかし自分自身を慈しみ労わることは、とても大切なことです。セルフ・コンパッションを意識して、あるがままの自分を受容しましょう。