適正な住居費は、年収の3割までと言われています。都心の一等地に住んでいる人は、もっとかかっているかもしれません。「働いても働いても、家賃の引き落とし日には貯金がほとんどなくなってしまう」という人も多いでしょう。その家賃は、どのように使われているのでしょうか。あなたの収入の何割かが渡る、大家さんの実態に迫ります。
「大家さん」という言葉に、どのようなイメージを持っているでしょうか。「代々地主の家系で、親からアパートを受け継いだ」「ケチ」「独身のおばあさん」「親切だけどおせっかい」……。物語に出てくる大家さんのイメージは、だいたいこのような感じでしょう。
地主の家系に大家さんが多いのは事実ですが、最近は別に本業を持ちながら不動産賃貸経営も行う「サラリーマン大家」が増えています。親が資産家でもなければ、宝くじが当たったわけでもなく、平均的な収入の人がマンションを持てるのです。
あなたが住むマンションの大家さんが、実は仲のいい同僚だったということもあり得ます。家賃を払う人ともらう人の違いは、不動産を持っているかどうかだけなのです。
普通のサラリーマンがマンションを持てる理由は、金融機関が融資をしてくれるからです。住宅ローンよりも少し高い金利を払い、お金を借りる。その返済には、入居者であるあなたが払った家賃が充てられます。
銀行は金利分を稼ぎ、大家さんはローン完済後にマンションという資産が手に入り、あなたは住む家を確保できるという、持ちつ持たれつの関係です。少しうがった見方をすれば、大家さんはあなたが払った家賃で自分の資産形成をしているとも言えます。
「ヒトのお金でマンションを手に入れるなんてずるい」と思うかもしれません。大家さんが行うマンション経営の実態を、もう少し詳しく見てみましょう。
サラリーマン大家が購入する不動産は、大きく分けて2種類あります。地方の中古1棟マンション(1棟買い)と、新築区分マンションです。賃貸物件には他にもいろいろな種類がありますが、物件価格と家賃収入の兼ね合いから、この2つのどちらかが入り口になるのが一般的です。
1棟買いは、マンションやアパートを敷地を含めて丸ごと買う方法です。都心の新築よりは、地方の中古のほうが安いので、サラリーマンの資金力でも手を出しやすいと言えます。
地方の中古1棟マンションには、規模が大きく、物件価格に対する家賃収入の割合(利回り)が高いため、大家さんの手元にお金が残りやすいという特徴があります。1棟マンションの家賃収入だけで生活している専業大家もいます。
家賃収入だけで生活できれば、精神的にかなり安定した暮らしができるのではないでしょうか。毎日会社に出勤する必要もなくなります。そのため、専業大家さんを目指す人は少なくありません。
地方の中古1棟マンションは、ハードルが高めです。手を出しやすいとはいえ、購入価格の1割~3割ほどの自己資金が必要になるケースが多いようです。少なくとも500万円から1,000万円くらいを、自力で貯めなければなりません。地方の中古1棟マンションは、サラリーマンの中でも年収1,000万円前後といった高収入の人が投資することが多いです。
しかし平均的な収入のサラリーマン大家はいないのかというと、そんなことはありません。多くの人は最初のステップとして、都心部の新築区分マンションに投資します。
新築は当たり外れが少なく、長期にわたって運用できるため、金融機関でローンを組みやすいという特徴があります。買うのは1部屋のみなので、1棟買いのように価格が高くありません。そのため、購入を決めてから実際に所有するまでの流れがスムーズです。
いずれ1棟マンションを買い、大家として生計を立てていきたい人にとって、始めに新築区分マンションで経験を積むことはプラスになります。金融機関に実績が評価され、ローンを組みやすくなるからです。
あなたが支払う家賃は、大家さんがその部屋の購入した時に組んだローンの返済に充てられます。立場に大きな違いがあるように見えるかもしれませんが、大家さんは普通のサラリーマンが兼ねていることもある、身近な存在です。希望すれば、あなたも遠くない将来に大家さんになれるでしょう。
新築区分マンションで大家さんデビューし、ゆくゆくは複数のマンションを所有したり、1棟マンションのオーナーになって、家賃収入だけで暮らすことも夢ではないのです。