看護師さんは同年代の女性と比較するとお給料は高い傾向があります。しかし、ふと気が付くと貯金があまりない方も多いようです。
「老後の生活?何とかなるでしょ。……と思っていたけど最近、やけに心細くなってきた。お金はある分だけ使ってしまうから、貯金はほとんどない。そういえば『老後は2,000万円必要』って、ニュースで言ってたっけ。たしか資産運用の大切さを伝える話だった気がする。……私もやってみようかな。でも、何から始めればいい?」
「資産運用に興味はあるけど、何をすればいいかわからない」という人は少なくありません。金融広報中央委員会の「金融リテラシー調査2019年」によると、株式や外貨預金などのリスク性資産を買ったことがある人は全体の約3分の1でした。運用の経験がない人が多数派なのです。
誰でも最初は初心者です。資産運用の始め方をステップごとに見ていきましょう。
第1ステップは、資産運用の目的を明確にすることです。手元にお金があるから、とりあえず投資してみようという人は意外に多いです。しかし動機が曖昧なままだと、無用なリスクを負ったり、熱くなってお金を使い果たしたりしてしまうかもしれません。
老後資金の確保が目的なら、具体的に何歳までにいくら必要なのか調べてみましょう。
話を単純にするため、ひとり暮らしを生涯続けると仮定します。平均的な給与で40年間勤め上げた人がもらう年金は、今のところ約15万6,000円です。ここから生活費を差し引くと、毎月の赤字額がわかります。これに退職後に生きるであろう期間をかけると、必要な老後資金が算出できます。
例えば生活費が25万6,000円だとすると、毎月の赤字は10万円。老後の人生が30年間だとすると、3,600万円足りません。仮に退職金が1,600万円だとすると、自分で2,000万円準備する必要があります。
働いていない期間が長かったり、給料が平均と大きく違ったりしているようであれば、年金額が変わってきます。日本年金機構の「ねんきんネット」に登録すると試算ができるので、試してみてください。
第2ステップは、資産運用に充てる金額を決めることです。先ほどの例の場合、いくら投資すれば定年までに2,000万円を確保できるでしょうか?
仮に毎月2万円を資産運用に回せるとしたら、35歳から60歳までの25年間で2,000万円作るためには、年間8.3%の利回りが必要です。銀行預金の利子が0.1%を切る現代においては、かなり高い利回りと言えます。達成するためには、相当なリスクを負わなければならないでしょう。そうなると、最終的に投資した金額を下回ってしまう可能性もあります。仮に投資できる金額が毎月5万円なら、必要な利回りは0.7%まで下がります。これなら十分達成できる数字です。
投資する金額と必要な利回りが決まったら、次は投資手法を選びます。毎月5万円を年0.7%で運用するとしたら、投資信託の積み立てなどがいいでしょう。しかし、今の生活費から毎月5万円切り詰めることを、定年まで続けられるでしょうか?ここで再び最初のステップに戻り、前提となる数字を考え直してみます。
老後の収入を毎月6万円増やすことができたら、30年間で合計2,160万円になり、不足分をまかなえることになります。毎月6万円もの収入アップなんて簡単にできるの?と思うかもしれませんが、ワンルームマンション1戸を持ち、家賃収入を得られれば十分可能です。
頭金を200万円貯めてローンを組み、1,500万円の新築マンションを買うとします。ローンの返済は家賃収入でまかなえるとすると、頭金さえ準備できれば投資を始められます。200万円貯めるには、毎月5万円の貯蓄を40ヵ月(3年4ヵ月)頑張る必要があります。定年まで続けるのは難しいかもしれませんが、具体的な短期目標があれば、頑張れるのではないでしょうか。
投資を始める年齢によっては、返済期間が短くなることで赤字が出てしまうかもしれません。それでも5万円を25年間貯め続けるよりは、少ない負担で済むはずです。
看護師さんは安定した収入があることから金融機関から見て、属性(評価)が高い傾向があります。属性が高いということは潜在的に資金を調達できることを意味します。
属性の高さを「消費」に使うか、あるいは「資産形成」に活用するかで、将来とても大きな資産の差になります。
ただし、間違っても築30年の中古マンションなどを買ってはいけません。ローンを返済する頃には、建物の価値はなくなっている可能性が高いからです。定年までにローンを完済しておけば、後は家賃収入のほとんどが老後の収入になります。そうなれば、資産運用の目的である老後資金の確保は達成できたと言えるでしょう。
資産運用を始める前には、まず目的を明確にし、次にそのために必要な投資額を決めます。その後目的に沿った投資手法を選びますが、無理が生じるようであれば、最初に戻って目的を考え直します。このようなステップを踏むことで、無理や無駄のない人生設計ができるようになるでしょう。