「大家さん」や「マンションオーナー」は、時間に縛られない自由な職業といえるかもしれません。この仕事につくためには、莫大な財産が必要なイメージを多くの人は持っているでしょう。しかし不動産を持ち、収入を得ること自体には、それほど多くのお金は必要ありません。少額から始め、本格的なオーナー業へステップアップすることも可能です。
最初のステップとして、何から始めるのがよいのでしょうか。
老後資金をつくる方法として、iDeCo(個人型確定拠出年金)が注目されています。特に所得税と住民税の節税効果が大きなメリットです。月々5,000円から積み立てることができるため、まとまった投資資金がない人にも向いています。
REIT(不動産投資信託)は、賃貸マンションやオフィスビルなどの不動産から生まれる家賃収入の一部を受け取る権利を売買するものです。株式のような感覚で、気軽に少額で不動産を買う方法だと考えてください。
iDeCoでは基本的に個別の株式(ソフトバンクや任天堂など)やREITは取り扱われていませんが、口座を持つ金融機関によってはREITへ投資する投資信託もあります。別の投資信託を通じて、REITを買うことができるわけです。間接的ではありますが、毎月5,000円からの投資で不動産オーナーになれる方法といえます。
iDeCoの節税メリットには、支払った税金が戻ってくる所得控除に加えて、運用益が非課税であることも挙げられます。REITは税制優遇や家賃収入の安定性などを理由に、投資家が利益を出しやすい商品です。iDeCoでREIT関連の商品を買うことによって、相乗効果による効率的な資産運用ができます。
REITの平均的な利回り(預金でいう金利)は高く、過去10年間で東証1部上場企業の平均を下回ったことは一度もありません。2019年9月現在は3.51%です。
この利回りを高いとみるでしょうか、それとも低いと見るでしょうか。毎年3.5%の利益を再び投資に回せば、20年間で初期投資額の2倍になります。これだけでも資産形成としては十分ではないでしょうか。
「もっとたくさん儲けて、オーナー業で自由に暮らしたい!」という人には、利回りを増やす方法があります。信用取引です。証券会社に信用取引口座を開設すると、手元にあるお金の約3.3倍までの取引ができるようになります。現金を担保にお金を借りるわけです。この倍率をレバレッジといいます。
ただし利回りが単純に3倍になるわけではありません。借りたお金には金利がかかるからです。たとえば証拠金の10万円を入金し、信用取引で10万円のREITを3口、つまり30万円分購入します。分配金(定期的に支払われる収益の「分け前」)が3.5%、金利が2.5%とします。
分配金が1.05万円、金利が0.75万円なので、差し引き3,000円の儲けとなります。実質的な利回りは3%と、信用取引を使わない場合を下回ってしまいます。さらに大きく価格が下がった場合は、強制的に取引を終了させられることもあります。
信用取引を使うと、価格が上昇したときに大きく儲かる可能性があります。ただし投資したお金がなくなってしまうリスクもあることには注意しなければなりません。
iDeCoのように税制メリットがあり、信用取引のように少ない資金で取引ができ、これらを上回る利回りを上げる方法があります。実物不動産、つまり本物の不動産です。賃貸用の区分所有マンションを買い、人に貸し出すことです。
購入資金はローンを組むため、用意するお金は数十万円で足りるケースが多いです。もちろん審査がありますが、看護師のような信用のある仕事であれば審査を通る可能性が高いでしょう。動かせる金額は信用取引の比ではありません。たとえば自己資金を100万円用意して2,500万円の物件を買うと、レバレッジは25倍となります。
実物不動産の利回りは購入価格に対して4~5%くらいと、REITよりも高めです。投資信託には運用会社や販売会社に支払う報酬など、金融商品であるがゆえにかかるコストがあります。実物不動産は管理会社への委託料や修繕費など、賃貸に必要な最低限しかかからないため、実質的な利回りを高めやすいのです。
実物不動産の最大の魅力は、ローンを返済し続けることによって、金利の負担が下がっていくことです。利回りと金利の差が開いていくことによって、実質的な利回りが増えていくわけです。返済期間中は費用のほうが収入を上回ることがありますが、iDeCoと似たような節税効果があります。
不動産への投資は10万円、毎月5,000円といった少額から始めることができます。現物不動産は数千万円しますが、高いレバレッジをかけられるため、数十万円から100万円程度での購入が可能です。興味がある人はREITにチャレンジし、もの足りなくなったらマンションを買うというステップアップも考慮してはいかがでしょうか。