看護師の中には、責任感の強さから、妊娠がわかってからもぎりぎりまで働き続けようとする人がいます。しかし、流産にはストレスも影響するといわれています。正しい知識を身につけ、赤ちゃんの命を優先することが大切です。今回は、流産の種類や健康保険が適用される流産手術について解説します。
流産という言葉を聞くと、女性なら誰もがどきっとするはず。流産にはさまざまな要因が関係してくるため、流産しても自分を責める必要はありません。しかし、流産を避けるためにできるだけのことをしたいと思うのも当然の心理です。
特に切迫流産の状態になると、精神的なストレスがかかる状態は極力避け、安静にしておくことが大切です。
切迫流産とは、「流産のリスクが高い状態」をいいます。そのため、まだ胎児は子宮に残っており、妊娠を継続できる可能性があります。多くの場合、性器からの出血によって流産に気づきます。出血量が多く、腹痛をともなう場合もあります。
切迫流産の状態から流産を避けるには、スポーツや物の運搬といった過剰な運動を避ける以外に方法がありません。今のところ、効果的な薬剤や治療法が存在しないため、安静にしていることが唯一できることになります。
看護師の仕事はやりがいがある反面、強いストレスを感じる場面も少なくないはずです。「人手が足りないから」「患者さんが気になるから」という理由で無理をしては、赤ちゃんも自分も危険にさらしてしまいます。妊娠中に体調に異変を感じた場合は、決して無理をせず、大事をとって休むことが大切です。
流産とは、妊娠22週より前に赤ちゃんが亡くなることをいいます。産婦人科学会によると、流産になるのは妊娠全体の約15%前後です。また、妊娠した女性のうち流産経験者は約40%もいます。人にはなかなか言えない人も多いですが、実は多くの女性が流産を経験しているといえるでしょう。
流産の8割以上は、妊娠12週未満の早い段階での流産です。早期に起こる流産の原因は、ほとんどが赤ちゃんの染色体異常です。母親の仕事や運動などが影響することはほぼありません。そのため、早期流産の場合は自分を責めすぎないことが大切です。
流産には、原因や症状、進行具合などさまざまな分類方法があります。
たとえば、母体保護の目的で行われる流産を人口流産といい、それ以外は自然流産といわれます。また、胎児は死亡していても出血や腹痛はない状態を、稽留流産といいます。一方、出血が始まってからは進行流産といいます。さらに、進行流産は状態によって完全流産と不完全流産に分類されます。
また、超音波検査で妊娠が確認できる前の非常に早い段階での流産を化学流産といいます。
稽留流産(胎児は死亡していても出血や腹痛はない状態)は、母親には自覚症状がないことがほとんどで、多くのケースでは診察によって判明します。
稽留流産の可能性ありと診断されるのは、超音波検査で赤ちゃんの姿や心拍が確認できなかった時です。その後、妊娠週数に誤差がある可能性を考慮して、1週間から2週間おいて再検査を行い、再検査によって診断を確定します。
稽留流産がわかった場合、入院して子宮内容除去手術を受けるか、外来で診察しつつ自然排出を待つかという選択肢があります。どちらの選択肢を選ぶかは、その時の症状や母親の希望、医師の意見などで総合的に決められます。
子宮内容除去手術では、感染症を防ぐため、胎嚢などの組織を取り出します。手術は全身麻酔の必要があるため、日帰りか1泊入院になることが多いです。
子宮内容除去手術は健康保険が適用されるため、自己負担額は1万円から4万円ほどです。費用は、入院日数や症状によって変わります。子宮内容除去手術によって、妊娠確率が下がることはありません。体調が回復したら、妊娠前と同様に考えて大丈夫です。
流産について正しい知識を身につけておけば、過剰に自分を責めたり落ち込んだりしなくてすみます。妊娠中はくれぐれも自分の体調面の変化に気を配り、仕事を早めに調整することが大切です。