2020.6.12
将来の備え

看護職特有のリスクに保険で備えよう!どんな種類があるの?


著者:木崎涼
大手税理士法人で多数の資産家の財務コンサルティングを経験。ファイナンシャルプランナー、M&Aシニアエキスパートの資格を持ちながら、執筆業を中心に幅広く活動している。


医療は患者さんの命や健康にかかわる責任の重い仕事です。加えて、医療現場はあわただしく、ちょっとしたミスが大きなトラブルに発展してしまうことも。

この記事では、看護師や助産師、保健師など看護職特有のリスクに備える方法として、賠償責任保険を紹介します。メリットや注意点を解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

看護職特有のリスクとは?トラブル事例も紹介

最近では、医療機関でトラブルが起きた時、患者さんやその家族から看護職が責任を問われる事例が増加しています。病院が訴えられるケースもありますが、トラブルの内容によっては、看護職が個人的に責任を問われるため、注意が必要です。

看護師特有のリスクは、対人事故・対物事故・その他に分けられます。それぞれの具体的な事例を下記に記しました。

<対人事故>
・医師の指示とは異なる投薬を行ってしまった。
・採血ミスで患者さんの神経を損傷してしまった。
・患者さんの爪切りをした際に、皮膚を傷つけてしまった。
・廊下を歩いている最中に患者さんにぶつかり、ケガを負わせてしまった。

<対物事故>
・患者さんの補聴器を壊してしまった。
・患者さんのスマートフォンを落とし、画面が割れてしまった。
・誤って患者さんの貴重品を不用品と一緒に捨ててしまった。

<その他>
・患者さんから預かったメガネをなくしてしまった。
・何気ない一言のつもりが、患者さんから名誉毀損として訴えられた。
・病棟の鍵を紛失し、交換費用を弁償することになった。

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看護職向けの賠償責任保険とは?メリットと注意点も紹介

医療現場にヒヤリハットはつきものです。それだけでなく、意図しないところでトラブルになってしまうケースも。こういったリスクを、個人の努力だけで未然に防ぐのは難しいといえます。そのため、最近では看護職向けの賠償責任保険が登場しています。

賠償責任保険に加入しておけば、対人事故・対物事故・その他のトラブルが起きた時、内容に応じて保険金を受け取れます。保険金は、事故の内容や保険の種類によって変わり、数十万円から1億円まで幅があります。

他にも、感染症に罹患した際にお見舞金を受け取れたり、血液曝露や飛沫等による職業感染事故の医療費が補償されたり、トラブルの際に無料で弁護士に法律相談ができたりと、さまざまなサービスが付帯されているケースもあります。

掛金は年間2,000円から6,000円程度が一般的です。

賠償責任保険に加入するメリットは、月額数百円の負担で、医療現場におけるさまざまなリスクに備えられることです。また、いざという時の備えをしておくことで、安心して仕事に専念できるのもメリットです。トラブルが起きた時も、すぐに第三者に相談することで、落ち着いて対処できるでしょう。

最近では、看護職が患者さんの横柄な態度や暴言、暴力、セクハラに悩まされるトラブルも多発しています。賠償責任保険に弁護士への法律相談サービスが付帯されていれば、こうしたトラブルの際に、弁護士に相談して適切なアドバイスを受けることもできます。

一方、賠償責任保険の注意点は、加入後にトラブルが起きたとしても、請求しなければ保険金は支払われない点です。意外と請求もれは起きやすいので、どのような事故やトラブルが補償対象になるかを加入時によく確認し、忘れず請求手続きをしましょう。

また、補償対象となるのは、賠償金や慰謝料、治療費、修理費用、初期対応費用などです。たとえば、トラブルが深刻化したあとに弁護士に依頼したとして、高額な弁護士費用のすべてを保険金でまかなえるかというと、そうとは限りません。

賠償責任保険に加入していたとしても、補償範囲や補償金額に注意しながら、慎重にトラブルに対応していくことが重要です。

賠償責任保険は看護職がリスクに備える1つの選択肢

看護職はやりがいもある反面、業務範囲が広く複雑で責任も重い仕事です。慢性的な人手不足に陥っている病院も多く、あわただしい業務の中で、ひやりとした経験を持つ看護職もいるでしょう。賠償責任保険は、看護職のそんな不安を軽減してくれる商品といえます。

一方で、賠償責任保険に加入することだけが選択肢ではありません。病院からクリニックや介護施設へと転職したり、診療科を変えたりといった方法で、業務上のリスクを低減できる可能性もあります。

自分がどんな働き方をしたいのかも踏まえ、リスクヘッジが必要と思うなら、賠償責任保険を検討してみるのもいいかもしれません。

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