看護師はやりがいがある一方で責任も重くストレスがたまりがちな仕事です。上手にストレスと向き合うためにはどんな工夫をしていけば良いのでしょうか。今回は、認知行動療法をベースとしたストレス対処術「ストレスコーピング」を紹介します。ストレスを小まめにケアして心身の疲れを取り除けば、仕事にもより前向きに取り組めるでしょう。
ストレスは知らないうちに蓄積し心身をむしばんでいきます。「最近、ストレスたまってる」と自覚している人もいれば「何となく疲れやすい」と自覚しないままストレスをためている人などさまざまです。ストレスのもとになるものをストレッサーと呼びます。ストレッサーには、人間関係にまつわる「心理・社会的ストレッサー」、暑さや寒さ・騒音などの「物理的ストレッサー」など、複数の種類があります。
看護師は患者とその家族など人とかかわることの多い仕事です。また医療機関には医師や看護師、事務員、その他の専門職などさまざまな専門性を持った人間が働いています。仕事をするうえで自分とは異なる専門性を持った人とうまく連携していかなければなりません。こういった背景から看護師は「心理・社会的ストレッサー」を抱えやすい傾向にあります。
加えて勤務時間が不規則になりがちなことから、恋人や家族とすれ違いや摩擦が生じてしまう可能性もあります。仕事と恋愛の両立に悩んだり、仕事への理解が得られないことに悩んだりする看護師も少なくありません。悩みの種を放っておくと、いずれうつ病や過労といった心身の不調として何らかの症状が現れてしまうケースもあります。
まずは自分の疲労度合いをきちんと自覚し「今、疲れているな」と思ったら決して無理をせず自分をケアすることが大切です。
心理学の分野の一つである認知行動療法では、ストレスに対処することを「ストレスコーピング」といいます。ストレスコーピングは、「問題焦点コーピング」と「情動焦点コーピング」の2種類に大きく分けられます。それぞれの特徴を順番に見ていってみましょう。
ストレッサーに直接働きかける方法です。例えば同僚との不和がストレスになっている場合、配置換えを希望したり転職したりするなどの解決策があります。また同僚に直接話すことで問題解決しようとするのも問題焦点コーピングといえるでしょう。問題焦点コーピングは、ストレッサーを直接取り除くため、うまくいけば一気にストレスから解放されることが期待できます。
一方で同僚との不和はストレスでも仕事にやりがいを感じていたり上司との相性はよかったりするなど、問題焦点コーピングで対処するのがベストとはいえない状況も少なくありません。
ストレッサーに対する認知に働きかける方法です。例えば同僚との不和がストレスになっている場合、「同僚の言葉を気にしすぎていないだろうか?」など自分の認知状態に焦点をあてます。情動焦点コーピングがうまくいけば、配置換えや転職といった大きなアクションを起こさなくても現状の環境のままストレッサーだけを取り除くことが可能です。
一方で避けたほうがいい大きなストレスに対して過度に情動焦点コーピングで対処しようとすると、かえってストレスが大きくなってしまう可能性があります。自分の捉え方を変えるだけでは対処しきれないストレスも少なくありません。「友達がこの状況ならどうアドバイスするかな?」という視点で客観的に自分の状況を見極めることが大切です。
患者さんのためにと考える優しい看護師や、責任感が強く無理をしてしまう看護師はたくさんいます。しかし看護師として職務を全うするにはまず自分自身の健康管理が大切です。自分自身が心身に不調をきたしてしまえば患者さんを悲しませてしまうことにもつながり、大好きな仕事もできなくなります。自分のストレスを正しくケアすることは、自分自身のためになることはもちろん周りのためにもなることなのです。
またストレスケアを自分で実践するとともに、一人で抱え込みすぎず周囲に相談したり助けを求めたりすることも時には必要です。